相続放棄をしても遺族年金は受け取れるか

文責:所長 弁護士 湯沢和紘

最終更新日:2025年04月15日

1 相続放棄をしても遺族年金を受け取ることは可能です

 結論から申し上げますと、相続放棄をしても、受給要件を満たしている方であれば、遺族年金を受け取ることができます。

 遺族年金(正確には遺族基礎年金と遺族厚生年金があります)は、国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が亡くなった際、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。

 遺族年金を受け取ることができる遺族の順位は、法律で定められています。そして、亡くなられた方の配偶者や子が高順位になっています。

 これらの方は被相続人の相続人であることが多いものの、遺族年金を受け取ることができる権利は、亡くなられた方の財産ではなく、遺族固有の権利であることから、相続放棄をしても受け取ることができるのです。

 参考リンク:日本年金機構・遺族年金

2 家庭裁判所による判断

 家庭裁判所も、「厚生年金法は、相続法とは別個の立場から受給権者と支給方法を定めたものとみられ、妻が支給を受けた遺族年金は、同人の固有の権利にもとづくもので、被相続人の遺産と解することはできない」と判断しています。

 このことからも、相続放棄をしても、元相続人である方が遺族年金を受け取ることができるということが分かります。

 【大阪家庭裁判所昭和59年4月11日審判】

 厚生年金保険法58条は、被保険者の死亡による遺族年金は、その者の遺族に支給することとし、同法59条で妻と18歳未満の子が第1順位の受給権者としているが、同法66条で妻が受給権を有する期間、子に対する遺族年金の支給を停止すると定めている。そして、妻と子が別居し生計を異にした場合でも分割支給の方法はなく、その配分の参考となる規定はない。厚生年金法は、相続法とは別個の立場から受給権者と支給方法を定めたものとみられ、妻が支給を受けた遺族年金は、同人の固有の権利にもとづくもので、被相続人の遺産と解することはできない。

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